Mirage Cameraで半球遠近法に浸る

Lenovoが発売するMirage Cameraは、Googleが提唱するVR180規格によるデジタル・カメラ。前面には人の目の間隔で2つのレンズが並び、その視差によって奥行きのあるステレオ3D撮影ができる。必要最小限の操作は上面の3つのボタンで可能。モニタ画面があるべき背面には何もない。前面すべてが撮影されるので、正確なフレーミングは不要だからだ。必要であれば、VR180アプリでプレビューする。

従来の360度カメラは、空間をそのまま写し取る。だが、人の目は前にしかない。物珍しいうちは左右や後方を振り返るものの、そのうち面倒になって前しか見なくなる。それならば前半分の180度映像で十分だと割り切ったのがVR180。その代わりにステレオ映像とすることで、自然な遠近感が得られるようになっている。ただし、通常のディスプレイではなく、ステレオ映像に対応したHMDなどで見る必要がある。

このVR180は自転車走行において、従来とどのように違うのだろうか。そこで、Mirage Cameraをヘルメットやハンドルバーに取り付けて、360度カメラと同じ場所を走ってみた。ヘルメットでは前半は頻繁に頭を動かし、後半は頭を動かさないようにしたのも同じだ。これをMirage SoloのYouTubeアプリならそのまま、Oculus Goのブラウザならステレオ360度(180度ではない)を選んで閲覧する。


ヘルメットに装着したMirage Cameraの映像


ハンドルバーに装着したMirage Cameraの映像

対応HMDで鑑賞するステレオ動画は、本能を刺激する奥行き感や立体感がある。比べればInsta360 Oneなどの非ステレオ動画がノッペリした世界に見えてくる。解像度が高い静止画は、さらに鮮烈なので、動画もそうなって欲しいところ。ただし、Mirage SoloもOculus Goも視野角が狭いので、覗き穴から世界を見ることになる。あるいは、被ったことはないが、昔の潜水ヘルメットだろうか。

一方、Mirage Cameraは手ブレ補正を備えてるものの、地面から突き上げる細かい振動は抑えられない。また、頭の振りは相殺しているものの、悲しいかな、半球映像なのでダーク・サイドが侵入してくる。さらに、空間的な向きが固定され、進行方向は考慮されない。つまり、右か左に曲がれば、視界の半分を虚無空間が覆う。そこで頭の向きを変えなければならず、前しか見ない前提が脆くも崩壊する。

さらに、地面からの振動を抑えるために、Mirage CameraをDJIのOsmo Mobileに取り付けてみた。このスタビライザーはハンドルバーへの取り付けが難しいが、苦労した割には多少振動が軽減された程度でしかない。しかも、振動が大きければ、Osmo Mobileが対応しきれず、首をうなだれてしまう。比較的振動が少ないアスファルトの道路で走行しても、段差は持ちこたえられないので、実用に耐えない。


ハンドルバーにOsmo MobileとMirage Cameraを取り付けた映像

MirageのCameraとSoloに期待したのは、高画質で遅延のないリアルタイム表示だ。だが、これはペア製品なのにできない。クラウド経由のストリーミングは何十秒も遅延する。SDカード差し替えは面倒かつ録画でしかない。Soloの前面カメラもシースルーにできない。このようにVR180関連は未熟な稚拙さが目立つ。だが、いつの日にかテレプレゼンスならぬテレライドができるだろう(おそらく)。

Mirage Camera(上)とMirage Solo(下)

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