フロボッツのハンドルバー

フロボッツ(Flobots)はアメリカのヒップホップなロック・バンド。2008年リリースのデビュー・シングルにして彼ら唯一のヒット曲「ハンドルバー」はバイオリンのピチカートに導かれて始まる。静かでメランコリックなアルペジオに、どこか不気味な雰囲気が漂う。そのミュージック・ビデオも色調を押さえたアニメーションで、歌の内容を実直に伝えてくれる。

冒頭、ふたりの男性が丘から自転車で駆け下りてくる。ハンドルから手を離して、爽快さに歓声を上げる。街に辿り着くと抱擁を交わして、ふたりは別々の方向に歩き出す。鳩マークの方向に進むのは褐色短髪野郎は、平和主義者のラッパーだろうか。歌って踊って友達とも仲が良い。恋人もいる。落ちていた林檎を拾って戻す実直さ。庶民的で平凡だが堅実といったところか。

I can ride my bike with no handlebars
No handlebars, No handlebars
I can ride my bike with no handlebars
No handlebars, No handlebars

僕はハンドルなしに自転車に乗れるよ
ハンドルなしでね、ハンドルなしだよ
僕はハンドルを離して自転車に乗れるよ
ハンドルを離してね、ハンドルは要らない

Look at me, look at me
hands in the air like it’s good to be
Alive, and I’m a famous rapper
even when the paths’re all crookedly
I can show you how to do-si-do
I can show you how to scratch a record
I can take apart the remote control
And I can almost put it back together
I can tie a knot in a cherry stem
I can tell you about Leif Ericson
I know all the words to “De Colores”
And “I’m Proud to be an American”
Me and my friend saw a platypus
Me and my friend made a comic book
And guess how long it took
I can do anything that I want, cause look

僕を見て、僕を見て
空中に手を挙げて、生きているっていいね
僕は有名なラッパーさ
たとえ道がすべて嘘っぱちだとしてもね
ドーシードーの踊りを教えてあげるよ
レコードのスクラッチだって教えてあげる
リモコンをバラバラに分解して
もう一度元に戻すことだってできる
サクランボの茎を舌で結べる
レイフ・エリクソンの話もしてあげる
De Colores」の歌詞は全部知っている
I’m Proud to be an American」もね
僕と友達はカモノハシを見たんだ
僕と友達はコミック本を作ったよ
どれくらい時間がかかったわかるかい
やりたいことはなんでもできるさ、わかるだろう

I can keep rhythm with no metronome
No metronome, no metronome
And I can see your face on the telephone
On the telephone, on the telephone

メトロノームなしにリズムを保てるよ
メトロノームは要らない、メトロノームは要らない
君の顔を電話で見るよ
電話でね、電話だよ。

一方、Cマークの方向に進んだ金髪横分け野郎は、勉強に勤しんでビジネスマンになる。中古品販売から始めて、雑誌を作り、エンジンを設計する。抗生物質を作り、コンピュータも開発する。貪欲に商売を広げ、利益を上げ、陰謀を巡らし、権力の一角に食い込んでいく。その象徴は巨大なタワー型のビルだ。そして、マイクを握り演説を始める。ビジネスに飽き足らず、彼は大統領に昇り詰める。

Look at me, look at me
Just called to say that it’s good to be
Alive, in such a small world
I’m all curled up with a book to read
I can make money, open up a thrift store
I can make a living off a magazine
I can design an engine
64 miles to a gallon of gasoline
I can make new antibiotics
I can make computers survive aquatic conditions
I know how to run the business
And I can make you wanna buy a product
Movers, shakers, and producers
Me and my friends understand the future
I see the strings that control the systems
I can do anything with no assistance, cause

僕を見て、僕を見て
こんな小さな世界でも、生きているっていいよねって
ちょっと言いたくて電話したんだ
身体を丸めて本を読みふけったよ
僕はお金を儲けることができる、中古品屋を開いてね
雑誌を作って生きてくこともできる
エンジンのデザインだってできる
1ガロンのガソリンで64マイル走れる
新しい抗生物質を作れる
水中で動作するコンピュータも作れるよ
ビジネスのやり方は分かっているのさ
お前が製品を買いたくなるように仕向けるよ
世界の有力者やプロデューサたち
僕と僕の友達は未来を理解している
僕はシステムを操る糸を見分ける
僕は助けなしに何でもできるさ、だって…

I can lead a nation with a microphone
With a microphone, with a microphone
And I can split the atoms of a molecule
Of a molecule, of a molecule

僕は1本のマイクで国を率いることができる
たった1本のマイクでね、一本のマイクでね
僕は分子の中の原子を分離できるよ
分子からだよ、分子だよ

鳩が鷹に捕食され、戦闘機が一直線に飛ぶ。監視カメラが廻り、平和が打ち壊される。ラッパーは蜂起を呼びかける。かつての友人であり、今や悪の権化となった大統領を倒すためだ。だが、国家の権力は強大であり、警察や軍隊の前に群衆は蹴散らされてしまう。さらに大統領の暴走は続く。ミサイルを放ち、狙撃し、大虐殺の果てに惑星を破壊しようとする。狂乱する全能の神の如く。

Look at me, look at me
driving and I won’t stop
And it feels so good to be
alive and on top
My reach is global, my tower secure
My cause is noble, my power is pure
I can hand out a million vaccinations
Or let ‘em all die in exasperation
Have ‘em all healed from their lacerations
Or have ‘em all killed by assassinations
I can make anybody go to prison
Just because I don’t like ‘em
And I can do anything with no permission
I have it all under my command because

僕を見て、僕を見て
ドライブしているんだ、止まりたくない
生きているって素晴らしい
頂上にいるって感じる
僕の手は世界を巡り、僕のタワーは安全
僕の動機は高貴で、僕の力は純粋
僕は百万人分のワクチンを分け与えるよ
あるいは全員を悪化させて死に追いやる
全員の怪我を治癒することもでる
あるいは暗殺して全員を皆殺しさ
僕は誰でも監獄にぶち込める
だって奴らが嫌いだからね
許可なく何だってできるんだ
僕の命令下にすべてがあるからね

I can guide a missile by satellite
By satellite, by satellite
And I can hit a target through a telescope
Through a telescope, through a telescope
And I can end the planet in a holocaust
In a holocaust, in a holocaust
In a holocaust, in a holocaust, in a holocaust

僕は人工衛星からミサイルを誘導するよ
人工衛星からね、人工衛星だよ
僕は望遠鏡で獲物を狙い撃ちできるよ
望遠鏡でね、望遠鏡だよ
そして僕はこの惑星を大虐殺で終わらせるともできる
大虐殺でね、大虐殺だよ
大虐殺でね、大虐殺だよ、大虐殺だよ

I can ride my bike with no handlebars
No handlebars, no handlebars
I can ride my bike with no handlebars
No handlebars, no handlebars

僕はハンドルなしに自転車に乗れるよ
ハンドルなしでね、ハンドルなしだよ
僕はハンドルを離して自転車に乗れるよ
ハンドル離してね、ハンドルは要らない

この曲とビデオは10年前に今日を予言していたのだろうか? 金髪横分けの狂った大統領が核ミサイルのボタンに手をかける。平和を愛するラッパーは正義のために立ち上がり、公僕の凶弾に倒れる。大統領は一瞬ひるんだ表情を見せる。この曲のタイトルであるハンドルバーから手を離して走ることは、爽快であると同時に一瞬で制御不能に陥る。丘を下る時、二人の違いは僅かしかなかったはずだ。

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