拡張自転車綺譚〜さかさまハンドル

さかさまペダルがあるなら、さかさまハンドルだってあるはず。だが、さかさまペダルはチェーンの「たすき掛け」で簡単に実現できたものの、さかさまハンドルの仕組みは見当がつかない。ハンドルを右に切ると、前輪が左を向くと良いのだが、ハンドルと前輪は固定されていて、反対に動くわけがない。だが、XYZ Cargo Trikeのハンドル機構を見て気がついた。これならできる、と。

XYZ Cargo Trikeは、カーゴの前面部が平らになっている。そこが底面になるよう持ち上げれば、垂直に倒立置きになる。天井高は必要だが底面積が小さくなるので、収納に場所を取らずで済む。また、コンポーネントやホイールが自由に動かせるので、メインテナンスにも適している。このような状態で、ハンドルを動かして前輪が左右に傾く様子を見てみる。以下の写真では自転車を底面から見ている。

底面では写真(A)のように、ハンドル部分(上の赤い点線)と前輪を繋ぐ部分(下の赤い点線)が、可動する一本のバー(青い点線)で繋がっている。このバーはボルトとナットを外して取り外し、新しい長めのバー(青い実線)で斜めに繋げば良さそうだ。ただし、上下のバー(赤い点線)は他の直交するバーに接着剤でも固定されている。従って、写真(B)や(C)のような加工は困難だった。

そこで、写真(D)のように上下のバーはそのままにして、新しいバー(青い実線)を斜めに渡すことにした。この場合、新しいバーの上部は中心寄りに取り付けられる。つまり、小さなハンドル操作で大きく向きが変わる。これがどの程度かは分からないので、運を天に任せるしかない。ただ、結果的に作業量が少なくて済むのは有り難い。気が変わって元に戻すのも簡単だ。

オープンソースのモジュラー型自転車であるXYZ Cargo Trikeは、フレームがすべてのアルミ角パイプで構成され、標準的なボルトとナットで固定されている。これらの部材はホームセンターで購入可能で、加工や固定も簡単に行える。一部ではあるが、電動ドリルや金切ノコギリで自転車を切り刻むのは、不思議な気分になる。素人作業なので1mm程度の誤差は生じていそうだ。

このようにして改造した機能によって、見事にハンドリングが逆になる。直線で構成されるので、どこかでつっかえるかと危惧したが、スムースに動いている。ブレーキやシフトのケーブルは、僅かに取り回しを調整する程度で済んだ。小さなハンドル操作で大きく向きが変わる点も違和感はなかった。場当たり的な目分量作業でも何とかなるのは、XYZ Cargo Trikeの優秀さだろう。

実際の操作感も悪くない。確かに左右が逆なので混乱するが、それほど怖いと感じることはない。これはトライクなので、どのように乗っても転倒しない安心感ゆえだろう。交通量が多い公道では避けるべきだが、慣れた頃にまた間違えて焦るのも楽しい。体得した運動感覚が揺すぶられる。さかさまペダルと同じく、さかさまハンドルも程良い異化体験が味わえる。

ちなみに、江戸時代の自転車、新製陸舟奔車もさかさまハンドルであった。考えてみれば、ハンドルを右に回わして自転車が右に曲がるのは、そのような機構の自転車に乗っているからに過ぎない。確かにシンプルで合理的だが、それが唯一絶対ではないはずだ。異なる要請で異なるメカニズムを持つに至った異星の自転車。そんなことを空想しながらペダルを漕ぐ。このペダルもさかさまであるべきだろう。

【追記】Dahon Visc EVOと同じくチェーンを「たすき掛け」にして、XYZ Cargo Trikeのさかさまペダル化を行った。この場合は、チェーン・テンショナーを外すことで過不足なくチェーンを渡すことができた。ただし、前後ギアは同一面にあるので、交差するチェーンは接触する。試し乗りには問題はないが、本格的な運用にはチェーン・ガイドを入れるなどの工夫が必要だろう。(2018.02.07)

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