拡張自転車綺譚〜さかさまペダル

ある日、ふと思い立った。チェーンを「たすき掛け」にすれば、後ろへ進めるのではないか、と。図の緑のようにチェーンを渡してペダルを踏めば、青い矢印の方向にチェーンが回り、後輪は逆回転する。だが、次の瞬間気がついた。自転車はフリーハブを備えているので、逆方向は空回りする。だめだこりゃ…しかし、ペダルを逆方向に回せば、赤い矢印のように動いて前に進むはず。これはこれで面白そう。

筆者は機械工作や自転車整備は御免こうむりたいタイプだが、チェーンの付け外しはイノテック105化で馴染みがある。きっとなんとかなると根拠のない自信を持って、作業を始めた。道具は既に持っている。達人ならチェーン・カッターだけで済ましそうだが、素人はいろいろと道具に頼ったほうが良い。そして、手がすぐに汚れるので手袋は必須。床の汚れ防止には新聞紙などを敷いておく。

マスター・リンク・ツール(左)、ミッシング・リンク(中央上)
チェーン・フック(中央中)、チェーン・カッター(中央下)
ニトリル手袋(右)

チェーンの「たすき掛け」とともに、今後の作業が楽になるように、ミッシング・リンクの取り付けておく。ただ、手軽なはずのミッシング・リンクは結構強固なので、専用のマスター・リンク・ツールを使う。また、作業中はチェーンの両端近くを、チェーン・フックで留めておく。リア・ディレイラーのバネによってチェーンが引っ張られるので、フックで固定しておけば安心というわけだ。

さて、実際に「たすき掛け」をすると、チェーンがチェーン・ステーに接触する。ただし、今回作業したDahonのVisc EVOでは、フロント・ギアをアウターに、リア・ギアを4枚目にすると、チェーン・ステーとの接触を避けることができた。ディレイラーは引っ張られるが、チェーンの延長は不要。チェーン同士も接触もしない。DahonのMuのようにチェーン・ステーがなければ、変速もできそうだ。

このようにして、さかさまペダリング車が完成。作業時間は試行錯誤を含めて30分程度。実際に乗ってみると、一瞬戸惑うものの、すぐに慣れる。運動感覚が混乱するかと思っていただけに、呆気ないほどに違和感がない。むしろ爽快なくらいに楽しめる。通りがかった人が驚くこともない。ただ、よく見ると足を逆に回してスイスイと自転車が進むので、クスっと笑ってしまう奇妙な光景だろう。

ちなみに、フィクシィやピストなどの固定ハブなら、反対方向にペダルを漕げば車輪が逆回転して後ろに進む。これはフェイキーやリバースと呼ばれるテクニック。チェーンを「たすき掛け」にして普通に漕げば後ろに進む。これぞ当初の夢に他ならない。しかし、後ろに目がない私たちが、後ろ向きに走るのは難しいはず。一方、今回の拡張自転車は、程良い異化体験として気軽に楽しめる。ぜひ試して欲しい。

【追記】Dahon Visc EVOと同じくチェーンを「たすき掛け」にして、XYZ Cargo Trikeのさかさまペダル化を行った。この場合は、チェーン・テンショナーを外すことで過不足なくチェーンを渡すことができた。ただし、前後ギアは同一面にあるので、交差するチェーンは接触する。試し乗りには問題はないが、本格的な運用にはチェーン・ガイドを入れるなどの工夫が必要だろう。(2018.02.07)

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