自転車ナビゲーションの最小解HAIZE

見知らぬ街や観光地を訪ねる時、なくてはならないのは地図とコンパス。ただ、紙を広げるのは昔の話。今や誰もがスマートフォンやサイクル・コンピュータの地図を使っている。目的地を決めれば、最短ルートで案内をしてくれる。しかし、ナビゲーションの指示に盲目的に従うのは、なんだか運転機械のような気分になる。周囲の景色を楽しんだり、路上の危険に注意を払うことも疎かになる。

そこで、ナビゲーションの再発明を目指したのがonomoのHAIZEだ。魔法のコンパスとも呼ばれる直径4cmの小さな円盤は、中央と周囲に一点ずつLEDの光が灯る。ただ、それだけだ。周囲の点は目的地の方角を示す。勘違いしそうだが、これは進む方向や曲り角ではない。ただ、点の先に目的地があることを示すだけだ。道の繋がりは考慮されていないので、その方向に進めるとは限らない。

中央のLEDは補助的な役割を果たす。停止している時は青だが、目的地に近づいている時は緑に、遠ざかっている時は赤く光る。目的地が近くなれば光の点滅間隔が早くなり、到着すれば周囲のLEDが派手にまたたく。つまり、方向と距離感だけで、周囲の様子を見て実際に進む道を探り当てなければならない。このようにしてライドが愉快な探検となり、想像力と判断力が試されることになる。

ちなみに、目的地の設定はスマートフォンのアプリで行う。ライド中はスマートフォンを見る必要はないが、アプリが現在位置の取得やLEDの制御を行っている。そして、HAIZE本体に内蔵された電子コンパスが、方位を補正して目的地を示す。動作は安定しており、方位や接近も的確だ。ただ、奇妙に感じて混乱するのは、便利で的確なナビゲーションに慣れきった私たちの哀しい性ゆえに他ならない。

このHAIZEは2015年11月にクラウドファンディングが成立し、2016年6月に製品が完成する予定だった。それが実際には1年半ほど遅れて、忘れた頃に届けられた。しかも、当初に計画されていたTurn-by-turn方式のナビゲーションは実現されていない。だが、現在の曖昧ナビゲーションこそが、このデバイスの真価に違いない。開発の遅れも機能の不足も帳消しになるほど、愛らしく愉快だ。

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