ジョン・ケイルの自転車

ジョン・ケイルJohn Cale)はベルベット・アンダーグラウンドのオリジナル・メンバーにして、ロック界三大馬顔の一人。幼少時からクラシック音楽の教育を受け、コーネリアス・カーデューらの実験音楽の系譜に連なるインテリでもある。ベースやヴィオラなど渋い楽器を好み、味わい深い印象的な曲を作る。翳りのある声は魅力的だが、朗々とした歌唱ではなく、主役に躍り出ることはない。

そんな彼のアルバム「HoboSapiens」(2003)には、その名も「Bicycle」なるトラックが収録されている。ただし、時折挟み込まれるベルの音以外は自転車に直接繋がる要素は聞き取れない。盟友ブライアン・イーノによる力強いドラム・ループも、躍動感のあるベース・ラインも、自転車の疾走感とは違うように思える。彼が自転車好きという話も寡黙にして知らない。

それでは何故に自転車なのか?と問いたくなる。スキャットだけだから、歌詞を手がかりにできない。実際にも、答えは分からない。ただ、気負わず心地良く何度も聴いてしまう。ペダルを漕ぐと、トゥ、トゥウルル、トゥ、トゥウルルと口ずさんでしまう。これはロード・バイクでもBMXでもなく、普通の人が普通に乗る普通の自転車だろう。何気なく平凡だが、快活なリズムを与えてくれる佳曲だ。

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