Our First e-Bike, Xiaomi MiJia QiCycle

2017年から2018年にかけて、日本での電動アシスト自転車の転換が起こりそうだ。日本の鎖国的状況を打ち破って、オランダのVanMoofやイタリアのBianchiが日本モデルを発売するのに続いて、ドイツのBoschも日本参入を果たし、アメリカのTrekTernなどが国内モデルを発売する。日本のメーカーでありながら海外展開のみであったシマノも動き出す。日本特有の子乗せママチャリにとどまる理由はない。

そこで、最初に電動アシスト自転車を買うとしたら、その最有力候補はXiaomiMiJia QiCycleだろう。Xiaomiは「中国のApple」と呼ばれるほどデザイン性の高い電子機器を発売し、それらが高機能かつ安価で、高い人気を博している。そのXiaomiが発売する電動アシスト自転車がQiCycleで、価格は2,999元(50,000円強)、ちょっとした人力自転車より安い衝撃的な価格設定。

だが、安かろう悪かろう製品ではない。まず、電動アシスト自転車には見えないほど、スッキリとした美しい外観を持ち、バッテリーや前後のライトも一体化されている。これだけでもゴテゴテとした醜悪な自転車は勝負にならない。単なる小径車と考えても、小粋でシンボリックなフォルムは名車の風格を漂わせている。重量は14.5gと、なんとか携えて階段の昇り降りができる程度。軽くはないが軽妙と言える。

しかも、これは折り畳み小径車。Bromptonより一手間かかるものの、同程度に小さくなる。シート・ポストの目盛りやサドルの回転を防ぐ溝など、復元する時に便利な工夫もある。このあたり、Dahonなどの老舗にはない目からウロコ機能。折り畳みとは関係ないが、ペダルの左右を示すシールやブレーキ・レバーに組み込まれたベルも気が利いている。駆け出しとは思えないセンスの良さ。

実際にもXiaomiは、パーソナル・トランスポート関連の企業の買収や投資によって、幅広く技術とノウハウを吸収している。その一つが一時期注目されたセグウェイで、高度な自律制御によって姿勢だけで操縦できる立ち乗り二輪車だ。この技術を推し進めれば、止まっても倒れない自転車もできる。そこまで先進的でなくても、すでにXiaomiは数多くの電動アシスト自転車のラインナップを揃えている。

ただし、現時点のQiCycleはバッテリー容量が小さく、航続距離が45km程度と短いことが物足りない。モーター音が大きいのも残念なところ。もっとも、この自転車は街乗り用であり、短距離の日常用途であれば事足りる。アシスト力やアシストのスムースさなら、まったく問題ない。漕ぎ出しでの急加速もないので、センサーとモーターを統合するソフトウェアの優秀さが感じられる。

さて、QiCycleを購入するのは一筋縄ではいかない。QiCycleは日本では発売されていないからだ。Amazonで海外直送品として購入は可能だが、現地の転売業者のマージンが上乗せされる。また、充電のために200Vに昇圧する300W以上の変圧器を用意しなければならない。このような諸費を含めると価格はかなり高くなるが、それでも凡百の電動アシスト自転車より安いのだから呆れてしまう。

さらに、輸入したQiCycleは中国仕様なので、アシストの最高速度は20km/hで問題ないが、アシスト比率は不明だ。道路交通法を遵守するために、公道では電源を入れない健康モードで走ろう。スマートフォンのアプリを用いれば、GPSでの現在位置に従って、その国の法規に合うように自動的に設定されるとの噂もある。ただ、そのような機能は確認できていないし、実際に試すこともできない。

これは、QiCycleは技適マークを取得しておらず、電波法違反になる場合があるからだ。QiCycleはBluetoothでスマートフォンと通信するので、電源を入れるとBluetoothのアドバタイズ・パケットが飛ぶことになる。これを避けるには、無線通信チップが入ったユニットをアルミホイルで厳重に覆って電波を遮断すると良い。これで私道なら、電動アシストを試すことができる。

このようにコストが高くなり、パフォーマンスを十分に発揮できないのは、ひとえにQiCycleが日本で正式に発売されてないためだ。日本の代理店のサイトでは、Coming soonのまま動きがない。Xiaomiにすれば、人口が少なく市場規模が小さい日本で商売する必要はないのだろう。しかも複雑な道路交通法や電波法が進出意欲を阻害する。不幸なのはガラパゴス小国に住む私たちだ。

つまるところ、日本の電動アシスト自転車の未来は、此の国が鎖国的状況を脱することができるか否かにかかっている。少なくとも、自分の意識や知識まで鎖国する必要はない。取り扱いは簡単だし、中国語の資料はWEB翻訳が利用できる。英語の取扱説明書iFixItの分解記事もある。走行性、デザイン、機能、価格など、QiCycleは街乗り電動アシスト自転車のベンチマークになるだろう。

【追記】QiCycle用フロント・ラックを注文した。AliExpressでの価格は$32(約3,600円)、送料は無料だが届くのに2週間ほどを要した。取り付けや使い勝手は問題ない。デザインと品質も上々。ケーブルを通す機構があるのは気が利いている。これに限らず、QiCycleは細かな配慮が行き届いていて、安かろう悪かろう的な中華イメージを良い意味で裏切っている。(2017.12.18)

【追記】QiCycleのチェーンもイノテック105化したところ、ミッシング・リンクのピンの長さが足りずに連結できなかった。チェーンには刻印されたKMC、Z、7C-3は、日本では流通していない型番と言う。外したピンを戻そうにも戻らない。だが、ダメ元で取り寄せたチェーン・ジョイントが合致して事なきを得た。シングルギアや内装ギア用に使われる単段厚歯(1/2 x 1/8)だったらしい。

One comment

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA