自転車と都市の国際会議Velo-City 2017

2017年6月にオランダとデンマークを回った調査旅行の目的のひとつは、自転車関連の国際会議としては世界最大規模と言われるVelo-Ciy 2017に参加することだった。そう、Velo(フランス語で自転車)とCity(都市)の会議だ。参加費は€950(12万円強)、一般的な学術会議からすると高額な部類だろう。事前知識も乏しいまま、アムステルダムから列車で1時間半の開催地ナイメーヘンに向かった。

ナイメーヘンの名を聞いたことがなかったが、調べてみると昨年2016年にオランダで最も優れたサイクリング・シティに選ばれている。国立の自転車博物館Veloramaもある。Velo-Ciy 2017の共同開催市であるアーネムとの間には高速自転車道もある。オランダの代表的な自転車メーカーGazelleやVanhulsteijnの本社も近郊にある。人口十数万人の緑豊かな美しい小都市に、ただならぬ自転車熱が漂っている。

さて、オープニング・セレモニーを中心とするVelo-Ciy 2017の雰囲気は、次のビデオに紹介されている。オランダ国王が出席して開会を宣言する(レバーを倒す)だけでなく、王妃とともに自転車に乗って市中を走行するのには驚かされた。この会議のエスタブリッシュメントぶりを示すと同時に、オランダがいかに自転車を重要視しているかが伺える。ちなみに、国王はKLMのパイロットでもある

実際のVelo-Ciy 2017は同地のクラシカルなコンサート・ホール(Concertgebouw de Vereeniging)をメイン会場として、世界各国から1,500人以上の参加者を集めて行われた。国際会議としては大規模とは言えないが、こじんまりとした会場は常に活気があり、華やかであった。参加者は欧州人が大半のようで、日本人参加者に出会うことはなく、時折出会う東洋人は大声で中国語を話していた。

会期は4日間に渡り、260人以上の登壇者による107のセッションが繰り広げられた。さらに60の屋外セッションも用意されている。これらは最大で14ものセッションが同時並行して行われる。つまり、会議の全容を把握するには、14人のチームを組んで臨む必要があるわけで、なかなかの過密ぶり。さらに、併設される展示会には100ものブースが並び、こちらもじっくり見て回るには時間を要する。

会議は”The Freedom of Cycling”をキャッチフレーズとして、社会資本、人々、自転車経済学、都市計画、統治運営の5つのテーマに基づいている。参加者は都市政策担当者やインフラやサービスの設計事業者が多い。学術や文化芸術関係者が少ないのは意外だが、今後の狙い目かもしれない。セッションの多くは講演形式だが、他にも小規模なディスカッションやペチャクチャなどもある。

筆者は行程の都合で初日と2日目に参加した。一番の印象は、何より誰もが自転車の魅力と可能性に惹かれて熱心に語り合っていることだ。自転車の会議だから当然だが、日本では見られない光景だろう。一方で、実績の自慢大会と未来への妄想競争に陥りかねない危惧も感じる。これは、厳密な比較や実験による検証が困難な社会学系の限界かもしれない。それだけに野外セッションの意義があった。

なお、会議の運営が優れていたことも印象に残った。すべてオンラインで申し込める一方で、参加費は請求書払いと銀行振込にも対応する柔軟さ。会場でのレジストレーションは待たされることなく、手首にICチップを埋め込んだリストバンドを巻かれる。以降の雑事はICチップでまかなえる。分厚い論文集はなしで、その代わりにたっぷりお土産が入った特製バックパックが渡されるといった具合。

Velo-City参加者全員に貸し出される自転車は、千数百台用意されており、これもICチップで施錠開錠ができる。隣町のアーネムで開催される初日夕方のオープニング・パーティへは自転車で移動する人が多く、さながらパレードの様相を呈した。さらに、2日目午後は特別列車を仕立ててアムステルダムに移動し、 千人以上での自転車ツアー。これらを滞りなく進行させる素晴らしいまでの手際良さ。

さて、Velo-City 2017に参加した率直な感想としては、何故この人たちは自転車は素晴らしいと口々に言っているのか?であった。普段は筆者自身が自転車礼賛しているだけに、逆の立場になったわけだ。しかも、都市施策や環境設計の話が多いので、基本的に実績自慢や妄想披露になる。社会科学系は検証や再現が難しい。信じる者は救われるのだろうか?自分の立場を再考する良い機会になった。

また、従来のVelo-Cityはヨーロッパが中心であったが、カナダのバンクーバー、オーストラリアのアデレード、そして昨年は台湾の台北、来年はブラジルのリオ・デ・ジャネイロと、隔年でヨーロッパ域外で開催されている。また、ある意味で自転車大国であり、かつ途上国であるアメリカ合衆国、中国本土、そして日本でも開催されるだろうか? Velo-Cityの動向はひとつの指標になりそうだ。

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