Shin・服部製作所インタビュー記事

クリティカル・サイクリングでは自転車を使った作品を制作しているが、より良い作品を追求すると、既製品のフレームやパーツでは限界を迎える。そのため作品制作に合わせて、オーダーメイドでパーツ制作を依頼している。現在制作中のパーツは、全天周カメラを自転車に取り付けるマウンタだ。アクション・カメラのマウンタは市販品で数多くが、全天周カメラとなると皆無であるため、特注品をお願いした次第。

今回はこのオーダーメイドのパーツを制作いただいている、愛知県丹羽郡にある「株式会社Shin・服部製作所」の代表、服部晋也さんに2017年1月に行ったインタビューを要約して掲載する。同社は約8畳半のスペースにて、服部さんが一人でオーダーメイドのフレーム製造や修理を行う自転車工房である。主に対面でオーダーメイドの自転車を制作しているほか、全国からの修理依頼にも応えるなど、自転車フレームを知り尽くした若きフレームビルダーだ。インタビューでは、会社設立のあらましから今後の展望などについて語っていただいた。

会社設立の経緯

服部さんは大学時代にサイクリングクラブ部長として、サイクリングやロードレース、ツーリングで北海道を一周するなど、自転車が好きという気持ちから幅広く活動を行っていた。競技に限らない活動の中でもイベントを企画するなど、オーガナイズする方面へ興味が湧き、卒業後は自転車用品を扱う問屋に入社。しかし問屋では自転車に興味がない人ばかりである職場への疑問や自身の祖父の死をきっかけに、好きに生きることを決意。フレームビルダーの道へ進んだ。アメリカのハンドメイドバイクが好きだったことから単身渡米し、一年間現地のフレームビルダーの元で修行を積んだ後、帰国し起業。当初は愛知の自転車ショップでバイトをしながらだったというが、今では注文が増えスペースが手狭になり、広いスペースに移転する予定だ。

仕事として成り立たせるために

同社の売りの一つは「ティグ溶接」という溶接手法と「フィレット・ブレイズ」という仕上げを組み合わせた技術だ。「ティグ溶接」とは蝋を接着剤として使用する溶接の手法の一つで、強度が高いことが特徴であるが、使用する業者は珍しい。「フィレット・ブレイズ」は溶接部分を綺麗に研磨していくことであり、日本のバイクでは主流の手法である。どちらも手間と時間のかかる作業であり、通常であれば高額になってしまうが、同社は価格を抑えている。これら高い技術を用いたハンドメイド・オーダーメイドであるにもかかわらず、値段を抑えることで、ブランド価値とは異なる価値を生むことを意図したという。

今後はアメリカへ輸出したり、「カーゴバイク(車体に大きな積載スペースを設けた自転車)」や「タンデム(二人乗りの自転車)」なども制作する予定だ。これらを作る動機はあくまで仕事のためであり、自身の理想を実現するためではないと話す。制作時間とのバランスを考えた上で客の願いを実現していくことが、重要なのだというのだ。自転車製造の業界において、競輪を扱う業者は定期的な注文が入り安定しているが、同社のような扱わない業者は仕事として成り立たせることは厳しい世界だという。不安定な仕事だからこそ、客の要望に応える必要があると話した。

経営者とアーティストの両面性

ではこの仕事に向く人はどんな人かという問いに対して、服部さんは「経営者とアーティストの両者のバランスを保てる持続性のある人ではないか」と答えた。自転車は本来工業製品だが、ハンドメイドのものはアートの要素も付随する。客の要望や経営に合わせてアートの面が強くなることがあるが、アートに寄りすぎてしまうと持続しないという。綺麗なフレームを作って話題となっても、経営者として帳面をつけなければ仕事にはならない。アーティストとして成立できるほど今の日本は景気が良くなく、資金繰りが難しい。だからこそ両者のバランスを保ち、持続できる人が向いているのだと話した。

ママチャリの可能性

そして今後自転車は、ママチャリが面白くなってくるのではないかという。現在趣味で自転車を購入する人へ向けた自転車は、上は最先端の技術を用いた高額の自転車が増え続け、下はおもちゃのようなものが増えるという真ん中が空洞化した構造になっている。ちょうど良い真ん中のママチャリを作るようになり、最終的にママチャリメーカーになりたいのだという。ママチャリは海外で評価が高い、優れた自転車である。カゴがあり、泥除けやスタンドもついていて便利だ。変に安く作りすぎてるものがある故に悪いイメージもあるが、ママチャリ自体が悪い訳ではなく、3万円程度から良くなるのだという。現在ロードバイクは奥さんの目を盗んでサイクリングに行く旦那さんが多いが、奥さんも乗って意外と面白いと思えるものになっていくと良いと話した。

 

以上、インタビューの内容をまとめてきたが、実際はこちらが投げる質問に対して、回答以上に多くのことをお教えいただき、より盛りだくさんな内容となっている。インタビューの全貌は「Shin・服部製作所インタビュー全文」に掲載している。今回のまとめでは入りきらなかった制作に係る技術の詳細から小話まで掲載しているので、楽しんで読んでいただけると感じている。本記事で興味を持たれた方は、こちらも是非ご一読いただきたい。

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