自転車を身体化するシンクロシフト

Shimano最新のロード・バイク用電動コンポーネントDura-Ace R9150シリーズの目玉は、シンクロシフトだと言う。これにより、右手のレバー操作だけで、最適なギア・チェンジを行い、左手のレバーが不要になる。元々、左右それぞれのレバー操作によってギアは切り替わる。それを連動させるだけなら、単純な動作のように思える。だが、実際には近年まで実現されなかった高度な機能。

筆者が使用する一世代前の9070シリーズ Di2でも、ファームウェア更新でシンクロシフトが可能になる。ところが、シンクロシフトは最新のバッテリーでなければ機能しない。さらにファームウェア更新はPCでしかできない。いずれも目が点になりそうな要求だ。仕方がないので、最新のバッテリーBT-DN110-1、同じく最新のワイヤレス・ユニットEW-WU111、そして同ユニットのために電線EW-SD50を発注。

9070を搭載するTrek Madone 9.9は、バッテリーやケーブルなどをすべてフレームに収めている。外観は美しいが、内部は壮絶なワイヤリングらしく、ユニットの交換はショップにお願いした。ファームウェア更新もショップで実施。つまり、新しいワイヤレス・ユニットは不要だったのだが、今後は各種設定にPCではなくスマートフォンが使える。PC嫌いとしては、ようやくDi2がまともになった。

充電のためにDi2のユニットをフレームから引き出す

さて、従来は左右のレバーで前後のギアを個別に操作する。この時、フロントを軽くすると極端にペダル感が軽くなるので、同時にリアを重くする。この時、リアを1段だけ重くするのか、2〜3段重くするのかは場合によって異なる。フロントを重くする場合は、その逆。しかも、ペダリングを意識しなければならなず、下手をするとチェーンが脱落する。このように滑らかなギア操作は、難解な課題だった。

これが新機能のシンクロシフトで、右手操作だけで済むのは快適。すぐに慣れる。前後ギアの組み合わせを考えるのではなく、軽くする、重くする、と単純に感覚的に操作すれば良いからだ。電動式が楽なのは、機械式のレバーを押し込む力が不要であるだけでなく、精神的負担が少ないからだ。シンクロシフトは、これを一歩先進める。機械操作に思い煩わされず、道を駆けることに集中する快感。

ただ、シンクロシフトも道半ばでしかない。片手だけとは言え、まだ操作が必要だからだ。歩く、走る、泳ぐ、いずれも操作は存在しない。外在機械である自転車が、真に身体化する次のステップは、オートシフトだろう。Shimanoが最初にDi2(Digital Integrated Intelligence)と、そのコンセプト・モデルNexave C910を発表した時、それは単なる電動化でなく、自動化だったのだから。

さらに、そもそも話として、複数の多段ギアの必要性は、必ずしも明白ではない。最適な前後ギアの組み合わせが複雑なので、シンクロシフトが考えられたわけだし、変化を滑らかにするにはギア数を増大させるしかない。かくして機構は複雑さは増すばかり。こうなると、シングル・ギアに電動アシストを組み合わせるなど、まったく異なる発想が必要になるかもしれない。

一方で、自転車の電動化は邪道とする意見は多い。電動アシストはもちろん、電動シフトすら嫌う人もいる。自らの筋肉を使うからこそ自転車、電動化はオートバイと変わらない、と言うわけだ。だが、裸足で荒野を駆けるわけでなない。自転車にしろ、道路にしろ、電力を含む膨大な資源の上に成立するテクノロジーの産物に他ならない。すでにルビコン川を渡った、その先での身体と機械の問題だからだ。

ところで、9070ではなぜ新型バッテリーが必要なのだろう。「より複雑な情報処理のため」といった説明がされるが、それはバッテリーの仕事ではない。しかも、新旧のバッテリー形状は同じであり、7.4V、500mAh、3.7Whという仕様も同じ。そこで旧型バッテリーSM-BTR2の内部を覗いてみた。電子回路はあるが、ご大層なパーツはなく、外部への結線は3本のようだ。どなたか説明して欲しい。

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