グランド・ツアーの自転車クッキング

自転車ライドのための料理本の最高峰が、Hannah Grant著「The Ground Tour Cookbook」だ。何が最高峰かと言えば、350ページに渡る内容もさることながら、実測値で1,737gもある重量だ。15インチのMacBook Pro(2016)の実測値1,806gに迫る勢い。写真では200ページの岩波文庫を重ねているので、その大きさと厚みが伝わるだろうか。これぞハードカバー図鑑と言わんばかりの近年稀にみる重厚さだ。

その内容は、初日のプロローグに始まり、20回のステージ、途中には2回の休息日と23日分のレシピとして構成されている。これはツール・ド・フランスを模しているらしい。毎回、4つか5つのレシピが紹介されており、最終日のみレシピが1つだ。最後が1つなのは不可解に思えたが、ツール・ド・フランスの最終ステージは凱旋ライドであり、真剣勝負ではないからだろう。細かい芸が微笑ましい。

ほとんどのレシピは見開きで、片ページに材料と手順が、もう片方に全面写真が記載されている。材料の種類は多いが、手順は短めであるレシピが多い。実際の現場での要請に応えて、豊かな味わいでありながら、簡単に素早く調理するように考えれれているのだろう。そして、出来上がった料理の写真が麗しいまでに素晴らしい。高級レストランに引けを取らない、ツアー料理とは思えない美しさだ。美味しそう!

巻末には携帯食、回復食、朝食、スナック、ソース、ドレッシング、ピクルス液、パンなどが載っている。これらもメインのレシピに劣らず魅力的で、一切手を抜くことなく美しい写真が添えられている。また、巻頭には簡潔だが充実した読み物がまとめられており、途中には要所要所に十余人にも及ぶプロ選手へのインタビューが挟まれる。このように充実した内容で、重量と相まって書籍満足度が高い。

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