年末のロング・ライド狂騒曲、FESTIVE500

クリスマス・イブから大晦日までの8日間で500kmものライドをしようと誘われたら、どう思うだろか?それがRaphaのFESTIVE500なるイベント。年末の寒く慌ただしい時期に、高速道路なら東京から大阪まで行ける距離を自転車で走る。例年は横目で見ていたが、2016年は参加することにした。怖いもの見たさとともに、クリティカル・サイクリングの実践的研究対象として申し分ないからだ。

FESTIVE500は自律分散型のオンライン・イベントで、時間や場所は限定されず世界中で参加可能。サイクル・コンピュータなどを使って走行距離を計測し、期間内の500km到達を目指す。ライド情報はStravaに随時集約されるので、他の参加者の様子も伝わってくる。ハッシュタグを付けてTwitterInstagramなどへの投稿も推奨される。最終的にオンラインで申請すると、認定証として記念ステッカーが届く。

東京を中心とする半径500kmの円

個人的には1ヵ月で1,000kmのライド経験がある程度。その倍のペースでなければ、8日間で500kmはできない。1日平均62.5kmだ。しかし、天候悪化や機材故障、疲労困憊なども考えられる。短期間なのでトラブルを挽回する時間はない。こう考えると恐ろしく達成困難に思える。もともと筆者は体力がなく、飽き性で、課題が嫌いとイベントに不向きな三拍子が揃っている。そこでFESTIVE500戦略をたてた。

  • 平地もしくは下り坂を走る(激坂は避ける)
  • 楽しみながらライドする(食事や休憩も大切)
  • 日中の明るい間のみ走る(日没までに自宅に戻る)
  • 走行距離を気にしない(目標に達しなくて構わない)

このような戦略を立てて、居住地の岐阜県大垣市を中心に周辺各地へ出かけた。平野部なので平地は多く、川沿いの道は走りやすい。寒いのは嫌なので、出発は朝9時以降。日没の夕方5時までのライド時間は長くても8時間。ただ、途中で休憩や食事をしたり、写真を撮ったり、メールやツイートをしたりで実走時間は半分もない。このようにして単独でFESTIVE500に挑戦した8日間を順に振り返ってみる。

Day 1 – December 24, Tuesday – 47.5km (47.5km in total)

初日はTREK Madone 9.9にて山に向かう。山と言っても標高が200m少々、急勾配ではないルートを選ぶ。しかし、途中でエンド金具が折れるトラブルが発生。チェーンが保持できず、ペダルが漕げない。不幸中の幸いは、トラブル地点からは下り坂が大半であり、駅に辿り着いてサイクル・トレインに乗れたこと。結果的に距離は短めに終わる。ショップでの修理は年明けになり、主力機が使えないことになる。

Day 2 – December 25, Wednesday – 69.8km (117.3km in total)

初日のトラブルのために代替機を整備するのに時間がかかり、2日目は昼前になってTROYTEC Revolution LRで出発する。これはリカンベントのローレーサーで、空気抵抗が極めて少なく、比較的楽に長距離を走ることができる。ただし、漕ぎ出しや上り坂には弱いので、行きは川沿いを戻りは平地を走り、ほぼ平坦なコースを取る。出発が遅かったので、初日を挽回するには至らなかったが、気にしない。

Day 3 – December 26, Thursday – 98.7km (216.0km in total)

3日目もリカンベントで、この日は朝から夕方まで背割堤など川沿いの道を走る。ほとんどの道で交通量は少なく、路面も良好なので走りやすい。河口に向かって傾斜しているはずだが、気がつかないほど平坦で、下りでも上りで苦労しない。ライドは快適だったが、3日目になって飽き性が現れ、嫌気を覚え始める。なぜ毎日走っているのか?あと5日も走り続けるのか?疑問がふつふつと湧き起こる。

Day 4 – December 27, Friday – 59.3km (275.3km in total)

連日のライドに飽きたので、4日目は気分を変えて電動アシスト自転車に挑戦。まずBrompton S6Lで10kmほど離れたレンタル場所へ行き、YAMAHAのスポーツ型を借りる。これで楽をして距離を稼ぐつもりが、大きな誤算であった。アシスト率から分かるように、20km/hにもなればアシストは弱く、単に重い自転車になるからだ。Bromptonに戻ると素晴らしく軽快に走れたのが皮肉であった。

Day 5 – December 28, Saturday – 69.7km (345.0km in total)

普通の自転車の優秀さを実感したので、5日目はリカンベントに戻り、養老山地と鈴鹿山脈の間を南へ向かう。このルートは前半が常に上り坂で標高250mに達する。実はこれが今回の全ライドでの最高地点であった。リカンベントは上り坂に弱いが、交通量が少ないので走りやすい。後半の下り坂はリカンベントの独壇場で、スピードを抑えるのに苦労するほど。南端に達したところでサイクル・トレインで戻る。

Day 6 – December 29, Sunday – 92.4km (437.4km in total)

6日目のリカンベントに乗り、今度は西へ向かい、関ヶ原を越えて琵琶湖湖畔までを往復する。関ヶ原越えなる言葉もあるほど交通の難所と思いきや、実際には緩やかな坂が大半で、標高は200mにしかならない。前日より長い距離になったが、それほど疲れない。ただ、途中でツール・ボトルのジッパーが壊れ、財布やロックが取り出せない事態に陥る。これは無理矢理こじ開けたが、予想しないトラブルだった。

Day 7 – December 30, Monday – 64.3km (501.7km in total)

前日までの積算距離が440km近くとなったので、7日目はBrompton S6Lで近隣周辺を走ることにした。ちょうど昼間に用事が多い日だったので、走り方としても好都合だった。Bromptonは折り畳み小径車ながら、走行性能も高く、この日のように市街地を走り回るのには特に適している。問題は7日目にして目標に到達すべきか否かであった。しかし、夕方には残り僅かとなったので、そのまま走破した。

Day 8 – December 31, Tuesday – 0.0km (501.7km in total)

既に規定の500kmに到達したので、最終日の8日目は自転車に乗らずに過ごす。この日も良い天候で、前日までの疲れも意外と残っていない。だが、ゴールに達したのに走り続けるアドレナリン・ジャンキーではない。自転車に乗らない贅沢を味いたい。もっとも、諸々の仕事が停滞していたのが正直なところ。年内に仕上げるために作業を効率的に進める。このテキパキ感は自転車のミニマリズムに近い。

ちなみに、筆者の勤務は裁量労働制なので、可能な限り早朝と夜に用務を行い、日中はライドに費やした。当該期間の主だった用事は会議参加3回、宴会参加1回、展覧会鑑賞1回、演奏会鑑賞1回、論文査読1回、制作指導2回、親族来訪1回。この他にも毎日入院中の家族を見舞い、隔日で本サイトの記事を執筆した。結果的に夜遅くまで作業せざるを得ない日が続いたが、それでも恵まれた立場かもしれない。

さて、FESTIVE500の8日間は天候に恵まれていた。日中に僅かに小雨が降った程度で、始終晴れ間が多く、少なからず日焼けをしたほど。気温も上がるが、指先がかじかむのは冬ならでは。オーバーヒート気味に汗をかくので、ライド後の洗濯が欠かせない。洗濯できない手袋や靴はドライヤーで乾かす。連日のライドとなるので、もう1セット衣服が欲しいと思うのは、イベント主催者であるRaphaの狙い通り。

大垣の気象データと走行距離

トラブルとしては、エンド金具の破損、電動アシスト自転車の誤選択、ツールボトルの故障の3回。いずれも翌日に影響するほどではなかったのが幸い。ただ、7日間でも3回は多いかもしれない。ライドが連続すればするほど、幾何級数的にトラブルが増えるに違いない。しかし、これら以外に問題はなく、もちろん事故にも遭わず、ヒヤリとすることもなかった。無理のない「ゆるふわ」ライドと田舎道の勝利だ。

一方、Stravaでは2日目にして500kmを達成する人が次々と現れた。最終的なトップは日本人男性で3,000km近く走っている。1日平均370km、わずかな仮眠だけで走り続けたのだろうか。次点はアメリカ人女性。筆者は15,005位だが、500kmを超えたあたりはダンゴ状態なので、順位は意味がない。ただ、全参加者82,405人に驚かされる。正しくソーシャル・ネットワークが可能にするテクノロジーの祭典だ。

それでは来年も参加するかと言えば、参加しないだろう。なにしろ体力がなく、飽き性で、課題が嫌いだから、一度達成したイベントを何度も繰り返す気になれない。とは言え、走り方を変えたり、走る場所を変えることも考えられる。オランダを周遊するとか、カリフォルニアの海岸線を南下するとか。万一2017年もFESTIVE500に参加したとしても、嘘つきと非難しないで欲しい。

FESTIVE500 2016 Photos

【追記】1ヵ月半ほど経った2月14日にFESTIVE500の完走証であるワッペンが郵送されてきた。厚手のフェルト地に精緻な刺繍が施されたワッペンは、年の瀬のライドのご褒美として相応しい。当時は寒さに震えながら出発したが、それでもまだ暖かったのだと思う、2月半ばの今日この頃だ。(2017.02.15)

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