自転車シェフが作る極上自転車料理

ツール・ド・フランスのように1ヵ月近くも各地を転戦するロード・レースともなれば、チームの裏方としてメカニック(自転車の整備)やマッサー(選手のマッサージ)とともにシェフ(料理の調理)が活躍する。何しろ、毎日200km前後を全力で走るのだから、食事のカロリーや栄養はもちろんのこと、食欲をそそり、食べる楽しみを引き出すことが必要になるのだろう。

ヘンリク・オーレ(Herik Orre)チーム・スカイの専属シェフで、彼が著した「Velochef」は正に「自転車の料理長」としての自負に溢れたレシピ本だ。どのページにも実に美味しそうな料理の写真が載っていて、写真集としても通用しそうな雰囲気。また、チーム・スカイの選手やバックステージの写真もあって、レースの裏側が垣間見れる。全編英文であるが、眺めているだけでも楽しい。

料理はレース前、レース中、レース後の3セクションに分けて紹介されている。それぞれ料理に求められるものが違うからだろう。中でもレース前、つまり朝食はもっとも大事だという。パンケーキ、スコーン、サンドウィッチ、ポリッジ(おかゆ)、スムージー、サラダ、オムレツなど、お馴染みの料理だが、中身は工夫されているのだろう。ちなみに、レースの3時間前になると選手は食事を摂らないそうだ。

レース中はサコッシュ(肩紐つきの布袋)に入れて渡す補給食や飲み物が中心になる。いわゆるエナジー・バーとしては、ミューズリーやナツメヤシで作るものもあるが、意外なところでは、お米のバーがベストとのことで炊飯器が登場する。飲み物のベストはパイナップル・ジュースで、これをミネラル・ウォーターで割っておくそうだ。他にもワッフルやバナナ・パン、レモネードなども紹介されている。

レース後の料理は見た目にも華やかで、選手たちの歓声が聞こえてきそう。スープやサラダ、野菜ジュースに始まり、メインはツナ、サーモン、チキン、ポーク、パスタ、ラザニアなどが並ぶ。いずれもヘルシーな食材と調理法なのだろう。ここでもサシミが登場するので、日本食好きなのかもしれない。もちろん、最後はデザートで、トリュフ、ティラミス、ケーキなどは見逃せない。

それぞれの料理や飲物にはコメントともに材料と調理方法が書かれている。筆者は料理をしないので判断できないが、某主婦さんによると記述方法は日本のレシピ本と大きくは変わらないそうだ。ただ、食材には日本では手に入りにくいものや、辞書を引いても何であるか分からないものもあるらしい。自転車好きのカフェやレストランで、全メニューを提供して欲しいものだ。

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