アイ・ウェイウェイの永久自転車

中国の現代芸術家アイ・ウェイウェイは、当代きっての美術家であり、活動家だ。一般に知られているのは、北京オリンピック芸術顧問として共同設計した通称「鳥の巣」だろう。だが、ほどなく体制を批判して辞任している。同時期には四川大地震で耐震性を欠く校舎が倒壊し、多くの児童が死亡した責任を追求した。このような活動を当局が快く思うはずもなく、本人は逮捕勾留され、妻が自宅軟禁されている。

一方でウェイウェイは、明解なメッセージを持った力強い美術作品を精力的に制作している。その代表作のひとつが”Forever”、つまり永久という名の自転車を素材としたシリーズだ。これには2台の自転車を組み合わせた簡潔な作品もあれば、十数台の自転車を繋ぎ合わせて巧みに構成した作品もある。そして圧巻は何千台もの自転車による躍動感のある建築スケールの作品だ。写真を見るだけで言葉を失う。

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この圧倒的で眩惑的な視覚インパクトは多言を要しない。同一の工業製品である何千もの自転車は、ハンドル、チェーン、タイヤなどが外され、銀色に輝く細身のフレームとホイールだけが残されている。直線と円となった金属は規則正しい整然さとリズミカルに広がる巧妙さをもって配置されている。自転車は固定され、ホイールは回転するが走れない。この無数の自転車に乗るのは中国の人々だろうか。


Forever Bicycles – Nuit Blanche from Colin King on Vimeo.

この作品に用いられる自転車は、いずれも中国の上海永久(Shanghai Forever)社の製品で、作品名の由来になっている。同社は1940年の創業で、いわゆるママチャリからロード・バイク、そして電動アシスト自転車まで幅広く製造し、広大な中国市場に供給している。台湾のGIANTは世界的なトップ・ブランドだが、そのGIANT(巨人)と並んで中国本土で人気が高いのがFOREVER(永久)らしい。

筆者は上海のギャラリーで十数台の自転車で構成された作品を見たことがある。自転車に興味がない頃で、偶然見かけたのが正直なところだ。だが、一見して胸をえぐるかのような鮮烈な印象を受けたのを覚えている。歴史的建造物の一角にあるギャラリーは街の喧騒を遮断し、作品が静謐な佇まいを見せていた。作品タイトルのFOREVERも記憶に残っている。何が永遠なのか見当がつかなかったからだ。

永久の自転車、永遠の中国。20世紀初頭、パリのアトリエの片隅に置かれた一輪の自転車が、21世紀になって中国人芸術家によって巨大な構造物へと変容した。それは中国の全世界への台頭と自らの限界の象徴として鎮座しているようだ。ただ、自転車が彫刻的な扱いであることはデュシャンと変わらない。その制約すら作品の駆動力だろうが、本来の機能を活かした手法が次のステージになる。

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