再帰性反射素材を纏う夜

夜間に自動車を運転していると、直前まで歩行者や自転車に気づかずに驚くことがある。当の本人がそ知らぬ顔なのは、自分では分からないからだ。だから、安全のために自らの存在を周囲に知らしめなければならない。そこで強力なライトや大きめの反射板を利用し、派手な衣服を身につける。目立ってダサいと思うほど目立つのが良い。安全は自分で確立しなければならない。

目立ってダサいの代表選手は安全タスキだろう、肩から斜めがけするアレだ。夜間に自動車のライトを浴びると眩しいくらいに光る。これは再帰性反射と呼ばれ、表面に敷き詰めた微小なガラスビーズやプリズムが光を元の方向に跳ね返す。自動車のライトがそのまま戻ってくるので、運転手からはとても明るく見えるわけだ。道路の標識にも同じ仕組みが使われている。

3Mの再帰性反射素材Scotchliteの解説
3Mの再帰性反射素材Scotchliteの解説

このような再帰性反射素材は、スポーツ・ウェアやスポーツ・シューズに使われて、夜間の安全性を高めている。例えば、カナダのSugoi(キャノンデール)のZap Bike Jacketはジャケット全体に再帰性反射素材が配されている。しかも、筆者が持っている同製品はネオン・イエロー色で昼間でも目立つ。ただし、再帰性反射素材はドット模様として使われているので、全面的に反射するわけではない。

Zap Bike Jacket by SUGOi
Zap Bike Jacket by SUGOi

伝え聞くところによると、2011年にNikeから発売されたVapor Flash Jacketは全面が完全に再帰性反射素材であったらしい。当時のビデオを見れば、布地全体がむらなく光を反射していることが分かる。ところが、自動車のヘッド・ライトが当たると、反射する光があまりにも強いので、ドライバーからの苦情が相次いだと言う。このためにNikeは反射性素材を控えめに使用するようになってしまう。


A Day in November – Nike Vapor Flash Jacket from Krzysztof Cichuta on Vimeo.

再帰性反射素材は、その高い反射率ゆえに光学迷彩服や、フラッシュによって変化する衣装に使われるなど、様々な応用が考えられる。面白かったのはBetabrandに登場したFlashback Photobomber Hoodieで、パパラッチに写真を撮られても顔が判別できないという無理矢理感のある提案。しかし、実際に昼間のiPhoneのフラッシュでも効果があった。厚手でやや重いが、サイクリングにも活躍しそうだ。

Flashback Photobomber Hoodie by Betabrand
Flashback Photobomber Hoodie by Betabrand

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