変り種ヘルメット

オートバイと違って、ヘルメットを被らずに気軽に乗れるのが自転車の良いところ。確かに道路交通法では自転車でのヘルメットの着用義務はなく、子供への着用努力が求められているだけだ(第六十三条の十一)。しかし、転倒などの事故に備えてヘルメットは必須だ。最初は煩わしいが、そのうち慣れてくるし、何より安心だ。ここでは筆者が使っている逸風変わったヘルメットを紹介する。

まず、LifeBEAM社のSmart Helmetは、一般的なヘルメットに見える。実際にもこの製品はLazer社のGenesisがベースだが、額にあたる部分に光学式の心拍センサーが組み込まれ、後頭部にBluetooth通信とバッテリーのユニットがはめ込まれている。心拍センサーの機能は一般的ながら、ヘルメットを被るだけで心拍を取れるのは快適。胸に巻きつける心拍センサーのように長時間着用しても不快ではない。

Smart Helmet by LifeBEAM
Smart Helmet by LifeBEAM

筆者は眼鏡をかけないのでサングラスは面倒だ。そこで、陽光や塵埃から目を守るためにBellのSTAR PRO SHIELDを使っている。目を覆うシールドは視野が広く、調光タイプなのでトンネルでも夜でも、そのまま使える。空力特性が高いエアロ・タイプなので、従来よりも速く走れること請け合い。ただし、風を巻き込まないので、夏場は顔の汗が吹き飛ばない。エアロ性能が高い証拠だが、痛し痒しである。

Star Pro Shield by Bell
Star Pro Shield by Bell

ヘルメットは思いのほか大きいので、旅行ではかさばる荷物となる。ヘルメットを小さく折り畳む試みはいくつかあるが、筆者はJeff Woolf OBEのMorpherを使っている。折り畳んだ状態では長辺が長くなるものの、かなり薄くなるのでスーツケースやカバンに入れやすい。折り畳みや組み立ては、慣れれば数秒で可能。装着感も極上とは言えないが、それなりに快適だ。なんとなく王蟲を思い起こす形状も悪くない。

morpher-helmet

Morphed by Jeff Woolf OBE
Morphe by Jeff Woolf OBE

ヘルメットを折り畳む試みはいくつかあるが、rin projectのカスクは前述のMorpherよりさらに小さくなり、軽量でもある。これは強化プラスチック製ヘルメットが開発される1990年代以前に使われていた頭部プロテクタで、古いレース写真ではよく見かける。現代のヘルメットより衝撃保護性が劣るが、ノーヘルよりはマシ。ヘッドギアっぽい外見なので、サイクル・キャップの上に被ると見かけが良くなる。

Casque by rin project
Casque by rin project

最後に、所有はしていないのだが、見えないヘルメットとでも呼ぶべきHovdingのHovding 2.0を紹介しておきたい。これはマフラーのように首のまわりに装着しておくと、転倒や衝突などの事故の際には瞬時にエア・バッグが広がって頭部を保護する仕組みだ。頭には何も被らないので開放的だし、ヘルメットよりも安全性が高いとされている。なんともユニークな発想だと感心してしまう。


hovding promotion from RPJ on Vimeo.

実は、この製品が発売されて間もない頃、ロンドンのショップに買う気満々で出かけた。しかし、平時のマフラー状態での装着感が息苦しかった。これは首が細長い欧米人向きの仕様だからだろう。また、エアバッグが広がった状態でも展示されていたが、これが薄い半透明の素材で心許ない。緊急時に確実に開くことを確認できないので、不安が掻き立てられる。そのようなわけで購入には至らなかった。

これはHovdingの問題ではない。新しい製品なので信頼に足る実績や評判がなく、安全試験での優れた結果があっても、感覚的に受け入れられないのだ。しかし、最上級のヘルメットを被っていても、それが万に一つの欠陥品かもしれない。歴史のある自動車のエアバッグでも大規模なリコールが発生した。信頼するのは勝手だが、保証はされない。ヘルメットに過大な期待をせず、安全な走行に努めるべきだろう。

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